空き家バンクの課題を解決するための伊賀市の取り組み

空き家バンクの課題

売りたい、貸したい人の不安や悩みと地域の課題

空き家バンクは全国各地の市町村で取り組まれ、一般的な空き家バンクでは、市町村が物件を募集し、売りたい、貸したい空き家所用者から物件登録を行い、買いたい、売りたい人へ情報を提供し斡旋を行っています。
 しかし、空き家は、築年数20~25年と長くなると経年減価等により資産評価価値が0となることから、これまで適切に維持管理されてきた投資額が資産評価価値に反映されず、一律に0と評価されることが慣行となっています。
 そのため、住宅流通を阻害する要因となり、「売らない、貸さない」といった囲い込み意識となり、空き家として放置することにつながっています。
 また、地域では、人の流れが滞り、人口減少と少子高齢が進むことで、地域の活性化が阻害され、コミュニティの維持が年々困難になり、最悪の場合、集落の消滅など地域の伝統文化が失われます。

買いたい、借りたい人の不安や悩みと地域住民の不安

中古住宅(空き家)は、築年数に応じた品質や性能の違いに加えて、その後の維持管理や劣化の状況により物件ごとの品質等に差があることから、買いたい、借りたい人は、その品質に不安を感じている人が多いことが指摘されています。

買いたい、借りたい人の不安や悩みと地域住民の不安のイメージ

中古住宅の購入を考えている人は、「新築と違い問題が多そう」や「中古住宅に抵抗感がある」、「後から欠陥が見つかると困る」といった不安を抱えている人が3人に1人います。このため、中古住宅を購入する際のサービスとして、安心できる物件かどうかの判断ができる診断サービスや、その物件がいつどのように建てられ、いつどのようにリフォームをしたかなどの住宅履歴がわかるサービスが求められています。(参考国土交通省中古住宅・リフォームトータルプラン)
 また、中古住宅を購入後、地域の慣習やルールに馴染めないなど、さまざまな面で不安や悩みを抱える方がいます。地域住民も同様に、不安を感じている方もいます。

課題を解決するための「伊賀流空き家バンク」

伊賀市では、こうした課題に取り組むため、適切に保全・維持管理された空き家に対して適正な資産評価額を査定するため、インスペクション(住宅検査)および住宅性能評価検査を導入し、空き家の適切な評価に取組んでいます。
 また、移住前や移住後も安心して暮らせるためのサポートを「移住コンシェルジュ」が行ってくれます。地域でも、移住者と地域住民をつなげ、地域での暮らしをサポートするための体制を整えています。

インスペクションとは

インスペクションを実施することで、売りたい、貸したい人は、建物の状態を明らかにすることで、買いたい、借りたい人の不安を軽減でき、売却しやすくなるほか、引渡し後の不具合が発生した場合のトラブルが起こるリスクを軽減できます。また、買いたい人は、建物の状態に応じた価格で安心して購入することができるようになり、国からの助成制度や瑕疵保険、金融機関の融資が受けられるなどのメリットを享受できます。

インスペクションとはのイメージ

  • 住宅の現状の市場価値
    • リフォームをしても価値の下落ベースが変わらない
    • メンテナンス状況によっては、建物がマイナス評価となる場合もある
  • 本来あるべき住宅の使用価値
    • 適正なメンテナンスをすれば価値が上昇し、資産価値が維持される

※築後20~25年で建物評価は0
(出典_国土交通省土地・建物産業局不動産課、住宅局住宅政策課中古戸建住宅に係る建物評価の改善に向けた指針のポイント)

住宅性能評価(既存住宅の住宅性能表示制度)とは

住宅性能表示制度とは、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度です。良質な住宅を安心して取得できる市場を形成するためにつくられた制度となっています。具体的には次の内容になっています。

  1. 住宅の性能(構造耐力、省エネルギー性、遮音性等)に関する表示の適正化を図るための共通ルール(表示の方法、評価の方法の基準)を設け、消費者による住宅の性能の相互比較を可能にします。
  2. 住宅の性能に関する評価を客観的に行う第三者機関を整備し、評価結果の信頼性を確保します。
  3. 住宅性能評価書に表示された住宅の性能は、契約内容とされることを原則とすることにより、表示された性能を実現します。

メリット1

万一トラブル発生時には紛争処理機関を利用することができ、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請することができます。

申請からの流れ

  1. 評価の申請
  2. 登録住宅性能評価機関による評価の実施
  3. 登録住宅性能評価機関による現況検査・評価書(建設住宅性能評価書)交付
  4. 紛争が発生した場合、指定住宅紛争処理機関に申立て

メリット2

住宅性能表示住宅は地震保険が優遇されます。品確法に基づく住宅性能評価書(新築および既存)を取得すると、地震保険料の割引を受けることができます。具体的には、評価された耐震性能の等級に応じて、最大50%の割引を受けることができます。

参考資料

移住者を受入れるための地域での取り組み

移住者は、地域のルールや習慣や慣習の違いから、地域住民との間に溝ができトラブルにつながることが、全国各地で問題となっています。
 そうした問題を解消するため、移住前から移住後も、地域と移住者をつなぐ世話人「コンシェルジュ」機能が有効な手段として注目を集めています。こうした取組みを参考にし、移住者と地域を繋ぐためのコンシェルジュ(世話人)機能を広く地域に定着させるため、ワークショップを開催し受け入れ態勢などの学習会を行っています。

島ヶ原地域でのワークショップの風景
ワークショップの風景

移住者を受入れるための関係団体との連携

さまざまな課題に向き合い、それらの解決を図りながら「伊賀流空き家バンク」を進めるためには、伊賀市が主体となり、移住者や空き家所有者を支援する体制が求められています。(空き家所有者アンケート調査結果から)
そうした体制を構築するため、伊賀市では、次の団体と協定を結び、移住者や空き家所有者への支援を行っています。

  • 公益社団法人 三重県宅地建物取引業協会(不動産仲介)
  • 公益社団法人 全日本不動産協会三重県本部(不動産仲介)
  • 一般社団法人 三重県建築士事務所協会(インスペクション、住宅性能評価、耐震評価
  • 一般社団法人 三重県不動産鑑定士協会(不動産鑑定)
  • 一般社団法人 三重県建設業協会(建築、除却など)
  • 三重県司法書士会(相続、登記など)
  • 三重県土地家屋調査士会(境界確定など)